SWEETS ESCALIER

新潟空港から車で10分。
黒い壁にロゴが掲げられた、シンプルな外観の建物があります。

秘密基地のようなこの建物、じつは世界的なチョコレートのコンテストで、数々の賞を受賞するパティシエのお店『sweets ESCALIER(スイーツ エスカリエ)』です。

「お店は空調だけこだわって、あとは大工さん達に『好きにやっちゃってください』とお願いしました。
コンセプトとか、あまりないんですよね、このお店。」
と、気さくに話すのが、このお店のオーナー、金子シェフです。

手前のショーケースにはチョコレート、奥のショーケースにはきらびやかなケーキたち、壁には様々なコンテストの賞状がずらりと並んでいます。
よくよく見ると、賞をとったコンテストは、チョコレートだけではありません。
飴細工、洋菓子技術などのコンテストでも、数々の実績を残しているのがわかります。

厨房に入って驚くのは、とんでもない数のレシピのメモ。
50を超す試行錯誤の道のりに、途方もない時間と手間がかかることが想像できます。
さらに予想外だったのは、『ベトナム七味』『グレナダウイスキーバレルエイジ』などなど、
挑戦的なフレーバーのチョコレートが少なくないことです。

「たくさん賞をもらってはいますが、まだまだ試行錯誤の途中です。じつは私の中にも、どれが正解なのか、確固たるものがないんです。そのため品評会に出して、フィードバックをもらっています。」

賞を受賞するのは、あくまで通過点。
謙虚な姿勢を崩さず、日々膨大な数の挑戦を続け、数々のチョコレートを生み出す金子シェフ。
そのエネルギーの源泉に、新潟県中越地震での経験がありました。

sweets ESCALIERのこれまで

新潟県、十日市氏出身の金子シェフ。
最初は料理人を志し、その道の厳しさから洋菓子の道に路線変更。
洋菓子店で8年間の修行を経て、地元の十日市でお店をオープンしました。
もともと実験や検証が好きだという金子シェフは、売れるお菓子を見抜いてはどんどん作り、順調に売り上げを伸ばしていったそうです。

そんな中、2004年10月23日、お店を新潟県中越地震が襲います。

<あれば、地震の時の写真>

「すごかったですねー。冷蔵庫のダクトがもげて降ってきたり。
一生懸命築き上げてきたものが、とても脆いものだったんだな、って実感しました。」

お店がダメージを受けるだけでなく、さらなる不安の種が金子シェフを襲います。
当時妊娠6カ月だった奥様が、破水してしまったのです。
その後、クリスマスイブに生まれたお子さんの体重は、たったの700グラム。
予定日より3カ月早い出産でした。

「まだ肺が未熟な状態で生まれてきたので、しばらくは保育器の中に入っていました。
何があるか、どう転ぶかもわからない状況で、これまで通りの営業はできなくなりました。」

家族をサポートするために、営業再開後は営業日や時間を変更。
休業日はまばらで、オープンする時間も午後の2時~6時など、変則的な時間となりました。
お客さんが来づらくなり、売上に影響するのでは…と思っていた金子シェフでしたが、
意外にも「ふつうにやっていける」売上が保てたといいます。

「それまでゴリゴリにやってきましたが、家族を大切にしながらでも意外といけるじゃん!ということに気づきました(笑)
そこで、売上アップに全力を尽くすのはやめて、出来た余裕を使って、新しいことにチャレンジをはじめました。
はじめは飴細工…これも賞がとれましたね。
それから、大阪とか、東京とかに講師として招かれる機会が増えました。」

飴細工のコンテストで受賞した賞状と、記念のコックコート

一つのものをコツコツと追及して、いいものを作ったとしても、
何かのきっかけで、全部台無しになってしまうかもしれない。
地震の経験からそんな考えを持つようになったシェフは、
どんどん多角的なスキルを身に着けていきます。

チョコレートのパッケージに使っているイラストは、なんとシェフの手書き。アカデミーオブチョコレートのパッケージ部門でも受賞をする出来栄えです。

出張が増えたため、空港からの便がいい現在の場所に、2014年にお店をリニューアルオープン。
オープンして1年後、日本のBean to Barチョコレート業界が活気づき、チョコレート作りを学ぶ場が作られていったのを機に、金子シェフもチョコレート作りに乗り出します。

「将来は、チョコレート専門店として、子供に残してあげたいと思っています。
生のケーキとは違って、チョコレートは海外とか遠くに持っていきやすいですので、世界に名だたるものづくりができる。
ライフワークとして、ちょうどいいなと思います。」

sweets ESCALIERのチョコレートの魅力

2019年のインナーナショナルチョコレートアワードでは5つのタブレットで銀賞・銅賞を受賞

sweets ESCALIERチョコレートの魅力は、多彩なフレーバーと、国際的にも認められる美味しさです。
インターナショナルチョコレートアワードやアカデミーオブチョコレート、ザ・ノースウエストチョコレートフェスティバルなどで数々の賞を受賞しています。

保管されているチョコレートの一覧。

ラインナップと美味しさ、その両立を支えるのは、とにかく試行錯誤を繰り返すチャレンジ精神と、徹底的にフィードバックを求める謙虚な姿勢です。

「アカデミーオブチョコレートというチョコレートの大会に出品すると、専門家からかなり詳しい感想がもらえます。
『このチョコレートは燻製の香りが強すぎると思うけど、審査員の中に一人だけ<めっちゃ好き>っていう人がいた』とか(笑)
そんな評価を頼りに、どんどん改良を加えていきます。
僕自身、他のお店のチョコレートをそんなに食べた経験はないので、詳しい感想がもらえるのは本当にありがたいですね!」

作る、評価してもらう、改良する…それを何度も何度も繰り返す。
口で言うのは簡単ですが、ケーキ屋としてお店を営業しながら、父親として家族を養いながら、実行するには苦労が伴います。
しかし、『試行錯誤が好き』という金子シェフは、朗らかな笑顔を浮かべながら、楽し気にチョコレートと向き合っています。

カカオ豆の産地によっても、テンパリングの最適温度が違う。いつでも同じ美味しさで作れるように、温度をメモして作業場に。

「こんなにいろいろ作っているの、と驚かれますが、全然苦ではありませんね。
むしろ、同じレシピのものをずっと作り続けるほうが辛いです。
そりゃあ、商品数を絞って、レシピを絞った方が楽ではありますが、
特にチョコレートは、入ってくる原料が安定しないという背景もあるので、あまりひとつのものにこだわらないようにしています。
キューバのチョコレートがいい例で、国の情勢が悪くなってしまったせいでカカオ豆が入手できなくなってしまい、やむを得ず廃盤になってしまいました。
だから、自分が思ういいものはこれだ!ってあまり決めないです。
その時々によって、豆によって、メンバーによって、作れるものは違ってくるので、
その時々のベストに向けて作りこんでいきます。」

自分の味を固定せず、食べる人の声を聞いて、どんどん改善を積み重ねる金子シェフ。
お店のロゴマークと同じように、世界への階段を着実に登り詰めています。

sweets ESCALIERのおすすめチョコレート

ベネズエラ チュアオ 75%

アカデミーオブチョコレートで、金子シェフの高い技術が認められたチョコレート。
というのも、一般的に『ベネズエラ チュアオ』とは、高品質なカカオ豆の産地として有名ですが、
シェフの手元にきたカカオ豆は、その特性が感じられない豆だったとか。
アカデミーオブチョコレートの審査員からは「この味はチュアオっぽくないから、多分本物のチュアオじゃないと思う。でも、凄い頑張って美味しく仕上げたのがわかります!」というフィードバックがあったそう。

サングリアを思わせるような、果実感とスパイシーさが共存する、エキゾチックな風味。

ウィスキーバレルエイジ グレナダ60% ミルク カフェ

ウイスキー樽で寝かせたカカオ豆とコーヒー豆を使用したダークミルクチョコレート。
ウィスキー由来のピート香(泥や灰を思わせる独特の燻煙香)と
濃い目のカフェオレ感が特徴的な、大人がハマる味わいです。

sweets ESCALIERのアクセス・営業時間

  • 所在地:新潟市東区大形本町5丁目1-53
  • 上越新幹線、信越本線 新潟駅よりバス25分、徒歩5分
  • 営業時間:10:00 – 19:00
  • 定休日:木曜日

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