Tribal Cacao

扉を開けた瞬間、鼻から頭へ駆け抜ける、強いカカオの香り。
それもそのはず、チョコレート作りをしているのは、カウンターを挟んだすぐ向こう側。
エプロン姿の店主が、ニコニコと試食を勧めてくれます。

「ふだん、何気なく食べているものの一つ一つ、その裏側には、『作っている人』や『素材の生産者』がいます。
そんな人たちに目を向けることで、食べ物の価値が実感できるようになると思うんです。
身の回りのものの価値を認めると、周囲に優しくなれる。
世界平和にも、つながるかも? 言い過ぎですかね(笑)」

気さくに笑う店主、橋本さんは、理系大学を卒業し、チョコレート店を開業した一風変わった人物。
橋本さんの作るチョコレートのキーワードは『余韻の長さ』と『果実感』です。
美味しさの裏側を見てほしい、と語る橋本さん。
お店ができるまでのストーリーをご紹介します。

Tribal Cacaoができるまで

橋本さんの世界旅行

橋本さんは理系の大学出身。
大学に在籍しながら、世界中を見て回るのが好きだった橋本さん。
アフリカ、ノルウェー、ラオス、ブルネイなどなど…車で1カ月かけて、ヨーロッパ30カ国を回ったこともあるそう。

旅で新しいものに出会う。
出会ったものと比べることで、自分の中に新しいものを見つける。
そんな体験が好きでした。

そんな世界旅行の中で、チョコレートの『自由さ』に気づいたと言います。

「チョコレートは世界中にあって、その土地によっていろんな形で愛されています。
例えば、日本では柚子や山椒といった和の素材と混ぜて楽しまれていますし、
ヨーロッパでは飲み物として飲まれるシーンが多いです。
そんなチョコレートの自由さと魅力にビジネスチャンスを感じました。」

チョコレート店の起業を決意

もともと、『自分自身の責任のもと、自由に働きたい』と考えていた橋本さん。
懇意にしていたコーヒー店のマスターと議論を重ね、「これからはチョコレートの時代だ」とチョコレート店の起業を決意しました。
まずは独学でチョコレート作りを始めた橋本さん。
もともと理系だったため、勉強と実験は得意。
十何冊もの専門書、取り寄せた文献を読みながら、周囲のコーヒー店やワイン店の方々の意見を聞き、改良を重ねて自分のチョコレートを形にしていきます。

お店の立ち上げ前に作ったチョコレート

「チョコレート作りは、さぼったら美味しくなくなるし、まじめに作ったらちゃんと美味しくできる。
そんな素直さにとてもやりがいを感じますね。」

生産者へのリスペクトを学ぶ、ダンデライオン・チョコレート時代

その後、最先端のチョコレートビジネスを学びたいと、チョコレート店で働くことに。
カカオと砂糖だけを使ったシンプルさや、自由でフレンドリーな雰囲気に惹かれ、ダンデライオン・チョコレートに入社しました。

ダンデライオンチョコレート時代、仲間と

「ダンデライオン・チョコレートで学んだもので一番大きかったのは、『生産者へのリスペクト』です。
カカオ豆の生産者の方と、ていねいにコミュニケーションをとって、何年間もかけて、信頼関係を作っていく。
そんな取り組みに感動しました。」

ダンデライオン・チョコレートで『生産者へのリスペクト』を学んだ橋本さん。
Tribal Cacaoのチョコレートに、産地名や、その土地の部族の名前を記載しています。
多くの国を回った経験がある橋本さんは、お客様の「この国はどんなところですか?」という質問に答えるのを楽しんでいるそうです。

「お客様にチョコレートの裏側を想像してもらえればいいな、と思います。
何気なく食べているものや日々使っているものって、絶対に誰かが作っているんですよね。
電車に乗るときにありがたみを感じる人は少ないと思いますが、鉄板1枚、ドア1枚、誰かが作っている。
そんな裏側の人たちを意識することで、物の価値を認めて、人の価値を認めていくと、
周囲に優しくなれるし、人生の楽しみが広がります。
そうやって想像力を働かせて、人生の楽しみを増やしてほしいなと思います。」

Tribal Cacaoのチョコレートの魅力

Tribal Cacaoのチョコレートの特徴は『余韻の長さ』『果実感』
このふたつを大切にしている理由は「市販のチョコレートとの違いをはっきり感じて、楽しんでほしいから」なんだそう。

「当店のチョコレートは、市販のチョコレートよりも高価です。
そのため、買っていただいたお客様に『ふつうのチョコレートとの違いがわからない…』と思われてしまったら、申し訳ないと思っています。
そこで大切にしているのが、『余韻の長さ』と『果実感』です。
市販のチョコレートと同様に、すっと溶けて香りがふわっと広がる滑らかさと、あと引く余韻。
でも広がる味わいはまったく違った、フルーツのようなジューシーさです。
これは、焙煎が強めにされている市販のチョコレートでは感じられない美味しさなので、その果実感を十分に楽しんでほしいです。」

滑らかな口どけを実現するのは、入念に行うコンチングです。
一般的に、チョコレートの中に入っているカカオマスの粒子は30μm以下のサイズに調整されています。
30μm以下にすることで、舌に触れた時に粒感がなく、滑らかに感じると言われています。
しかし、チョコレートの粒の大きさは、ふつうは一定ではありません。
10μmの粒子や50μmの粒子などが混在しているのが一般的で、大きい粒子があると、わずかに粒っぽさが感じられることもあります。
そこを、30μm以上の粒子がなくなるように、徹底的にコンチングを行うのが橋本さんのこだわりです。

しかし、コンチングを長く行うと、香りが飛びやすく、大切なカカオの『果実感』が消えてしまいがち。
そこを、さまざまなテクニックでカバーします。
コンチングの最中に立ち上る香りやチョコレートの味から、現在のチョコレートの状態を判断。
装置を温めたり、蓋をしめたり、砂糖を入れるタイミングを変えたり、カカオの粒をすりつぶす圧力を変えたりと、さまざまな調整を行います。

「カカオ豆にもともと入っている水分量や香りの質によって、最適な条件が変化します。
そのため、新しい豆が入ってくるたびに、答えを見つけるために試行錯誤します。
何度もチョコレート作りを繰り返して、経験を積めば失敗は減ってきますが、毎回がチョコレートとの戦いです(笑)
1週間かけて作ったのに、最終的に十数枚しか作れなかったこともありましたね…
ポチっと装置のボタンを押して出来上がってくれれば楽ですが、そうじゃないところが楽しいですね。」

出来上がったチョコレートは、口中でスッと溶けて、花や果物のような華やかな味わいが駆け抜けていきます。
ふだん私たちが食べるチョコレートとは明らかに違う、透明感とおどろくほど長い余韻を、ぜひ味わってみてください。

Tribal Cacaoのおすすめチョコレート

Tribal CacaoのおすすめBean to Bar:ガーナ

『チョコレートと言えばガーナ』というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか?
日本で市販されているチョコレートのカカオ豆はガーナ産が多く、日本人にとって最も親しみやすい味がガーナチョコレートのコクのある味わいです。
しかし、橋本さんの手にかかれば、そこに果実感がプラスされ、目が覚めるような新鮮さが楽しめます。
コク・果実感の両方が絡み合う美味しさは、チョコレート好きも納得の美味しさです。

Tribal CacaoのおすすめBean to Bar:トリニダード・トバゴ

他ブランドのチョコでは味わえない、複雑な風味を楽しめるのがTribal Cacaoのトリニダード・トバゴです。
まるでブルーチーズのような旨味とコクがヨーグルトのような酸味と絡み合う、新感覚の美味しさ。ワインとの相性も抜群です。
こちらもチョコ好きの人には一度は食べていただきたい個性派チョコレートです。

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Tribal Cacaoの営業時間、アクセス、定休日

所在地:〒277-0841 千葉県柏市あけぼの4-4-3 ルミエールジビキ101
JR常磐線 柏駅 徒歩10分
東部野田線 柏駅 徒歩10分
営業時間:10:00~19:00
定休日:水曜日、第三木曜日

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