JIKA CHOCOLAT(OTANAHA)

世界でも有数のカカオ生産国・インドネシア。
この国で栽培されたカカオ豆のほとんどは、チョコレートに加工するため海外に輸出されますが、中には栽培から加工まで現地で行っているこだわりのブランドがあります。それが今回ご紹介する「JIKA CHOCOLAT」です。

 

ソムリエ資格を持つ創業者ならではの、実直で贅沢なチョコレート

「JIKA CHOCOLAT」はモンペリエのワインスクールを卒業し、アジア各国でワイン・リキュールの輸入販売のお仕事をされていたバルドウィンさんが設立したブランドです。業務でインドネシア各地を巡る中、現地で栽培されているカカオ豆に出会い「インドネシアのカカオを世界に発信したい」と、チョコレートの製造を決意したそうです。

ジャカルタの工場でのチョコレート製造の様子

もともと幼少期からチョコが大好きだったバルドウィンさん。祖母の影響で、カカオ70%ビターなチョコも、14歳になる頃にはお気に入りになっていたそうです。ソムリエの知識を生かして選び抜いた農園のカカオ豆を使用し、ジャカルタの工場でチョコの製造を始めたのは2017年。
それまでインドネシアのカカオ農家では行われていなかった風味好転のための「発酵作業」を推進し、農家を定期的に訪れることで、カカオ豆の品質向上に努めています。

現地での発酵・乾燥作業の様子。 発酵中の木箱の乗っているのはバナナの葉です。

工場に運ばれたカカオ豆は、手作業で選別と品質確認がなされた後、焙煎・粉砕・コンチングを経てチョコレートになります。
JIKA CHOCOLATの特徴は、そのカカオの力強く濃厚な風味と、卓越したまろやかさ。エイジング(熟成工程)にもこだわっており(詳しくは起業秘密だそうです)バルドウィンさんの実直に美味しいものを追求する誠実さが伝わってきます。

農園での収穫や作業風景。さまざまな植物が共生する土地で作業をしています。

勿論、追及しているのは味の美味しさだけではありません。原材料の透明性と安全性を確保するためのトレーサビリティ構築も進めており、カカオ農家の収入増とモチベーション向上に繋がるフェアトレードを行っています。さらに有機栽培も導入することで、環境にも栽培者にも製造者にも消費者にも嬉しいサイクルを生み出しています。

持続可能なカカオ栽培で、森林も農家も幸せに

そんな「JIKA CHOCOLAT」が特に力を入れているのが「OTANAHA」チョコレート。
インドネシア中部・海に囲まれた「ゴロンタロ」と呼ばれる州で栽培されたカカオが使用されています。

もともとこの土地ではトウモロコシ農業がさかんでした。ですが焼畑農業を繰り返した結果、森林が失われ、干ばつや洪水の被害が多発しています。木々の減少で雨水を吸収できなくなり、湖底に川に運ばれた土砂が堆積し、湖が消滅する――という悪循環に陥っているのです。

過度の焼畑農業で森林が失われ、劣化していく土地

そこで2011年より、松下ゴーベル財団の支援のもと、カカオ栽培の推進による環境保全への取り組みが始まりました。
「途上国における森林減少を食い止めるための支援を、国際社会全体で行うことで、将来的に排出していたであろうCO2を削減する」
REDD+と呼ばれるこの活動は、パリ協定(気候変動問題への国際的な枠組み)で推進されている事業の1つで、
再生可能エネルギーや新エネルギーとはまた違ったアプローチの気候変動対策です。

ゴロンタロ州の森に植えられるカカオの苗木達

「トウモロコシの代替としてカカオが注目されたのは、アグロフォレストリ―(林業と農業の両立できる持続可能な農法)を導入できるという点からです。植樹と、作物の収穫が同時に行えるだけでなく、共生させる植物によって、効率的に栽培ができたり、農薬を減らせたりもします」
農園の詳しいお話を聞かせて下さったのは、現地で農家を取りまとめているDIDIさん(写真下中央)

「単一栽培のトウモロコシとは異なり、カカオは平行栽培が可能です。ゴロンタロの森では、カカオと共に、レモングラス・ココナッツ・クローブ・トウガラシ・ナツメグ・バナナ・キャンドルナッツなども栽培されています。この手法であれば、農家の収入増だけでなく、不作の際のリスクヘッジにもなります」
「カカオの栽培を始めたことで、農園で働く人々は、トウモロコシ畑を焼く煙の悪臭に悩まされることも、陽に焼ける機会も減りました。地球環境だけでなく、現地で作業をする人々のカラダにも優しいのです。カカオ農園で働く母親と同じ森で、子供達が遊ぶようにもなりました。収入も上がり、住環境も良くなりつつある――将来的にゴロンタロの土地にカカオを増やして、自然も生活も、もっと豊かにしていきたいです」
そう語られるDIDIさんの決意に満ちた力強い言葉が、とても印象的でした。

現地で育てた作物を組み合わせて、チョコレートを作る

そんなゴロンタロ州のカカオが使用されているOTANAHAチョコレートに使用されているのは「アレンシュガー」という地元の伝統的な砂糖です。キャラメルや黒糖のような独特なコクが特徴的です。

アレンシュガーの木での収穫作業と、砂糖製造の様子。

カカオも砂糖も現地で育てたものを使用する……OTANAHAチョコレートには、ゴロンタロという土地の歴史や生態系ならではの空気感が詰まっています。
「その土地で獲れる農作物だけで、美味しいチョコレートを作り上げることに、強い意義を感じています」と話して下さったのはJIKA CHOCOLATのバルドウィンさん。製造へのこだわり、ゴロンタロ農家の奮闘、それを支える人々の情熱がOTANAHAチョコレートを作り上げています。

「OTANAHA(オタナハ)」という名前の由来になったゴロンタロの砲台跡と
来日したヘルさん(松下ゴーベル財団)とバルドウィンさん(JIKA CHOCOLAT

現地でのカカオ栽培による環境保全プロジェクトに長く関わってきた松下ゴーベル財団のHeruさんも「利益の追及だけでは、持続可能な世界にはならない。インドネシアの農家・商社・支援団体、皆で協力して heart-to-heart ――心のこもったチョコを世界に届け、広げていきたい。そして、OTANAHAのチョコレートをきっかけに、実り豊かで美しいインドネシアにも遊びに来て下さい」と話しておられました。
ショコラナビだけでしか入手できない、貴重なインドネシア現地製造チョコレート、是非味わってみて下さい。

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