PRESQU’ILE chocolaterie

お店の扉をあけると、色とりどりのケーキとチョコレートがずらりと並んでいます。
金箔で彩られたボンボンショコラに、ワイン色のソースがトロリと溶けだすフォンダンショコラ。
今日は何にしよう、迷えば迷うほどワクワクしていきます。

ここPRESQU’ILE chocolaterie(プレスキルショコラトリー)は、吉祥寺にお店を構えるショコラトリー。
お店を営むのは小抜シェフ。
数々のお店やコンテストで培ってきた技術で、お客様の心が踊るお菓子を提供しています。

「お菓子屋さんは自分の作りたいものばかりを作っていてはいけません。
お客様に喜んでもらえるお菓子はどんなものなのか、日々研究を重ねています。
お客様の求めているものを、そして、ショコラティエならではの技術が活かせるものを、が常に意識していることですね」

現在のプレスキルショコラトリーで並ぶお菓子達は、すべて小抜シェフが手掛けたもの。
一口食べた時の美味しさだけでなく、口の中での香りの変化や、ビジュアルも考えられた、心が躍るお菓子ばかり。
そんなお菓子がどのように生まれているのかをご紹介します。

 

 

PRESQU’ILE chocolaterieができるまで

小抜シェフの本格ショコラとの出会いは、18歳のころ。
製菓学校に通っていた小抜シェフは、当時の講師だった水野シェフの技術を目の当たりにし、驚きました。
水野シェフは2007年、ワールドチョコレートマスターズというチョコレートの世界大会に日本代表として出場し、日本人初の優勝を飾った人物です。

「世界のトップレベルの技術を目にして、それまで知らなかった『ショコラティエ』の世界の奥深さを感じました。
はじめは何をやっているか全然理解できませんでしたね(笑)」

水野シェフの影響もあり、ショコラの技術に興味をもった小抜シェフ。
製菓学校卒業後も、多くのお店で経験を積み、技術を身に着けていきます。

「ふつう、企業に勤めていたら、上司に『辞められたら困る』と言われがちですよね。
でも、ショコラティエは、多くのお店で修行を積んで、技術を研鑽していくことが必要です。
僕が働いていたお店の方々も、皆さんその点をわかっていてくださっていて、
『ここでの技術はしっかり身についたし、次に行こうか』と、快く送り出してくれました。」

一店舗目、三鷹の「マ・プリエール」では、お菓子とショコラの基礎の基礎を、
二店舗目、「デカダンス・ド・ショコラ」では、フランス人シェフのもと、フランス流の素材の使い方、活かし方を、
三店舗目の「ザ・リッツカールトン東京」では、お客様からのご要望に何があってもお応えするホスピタリティを学びました。

さらに、店舗で働く傍ら、さまざまなチョコレートのコンテストにも挑戦します。

ベルコラーデアワードファイナリストの面々

「2012年と2014年、ベルコラーデ・アワードというコンテストに挑戦し、ファイナルまで進みました。
惜しくも優勝はなりませんでしたが、コンテストに向けてチョコレートを作ることで、また一段と腕が上がります。」

コンテストで求められる技術は、販売用のチョコレートを作る技術よりも、一段と高いもの。
例えば、1粒のボンボンショコラの中に3つの層を作る技術が、審査で求められました。
3つの層のボンボンショコラとは、1層目はアーモンドプラリネ、2層目はレモングラスのガナッシュ、3層目にレモンのパートドフリュイを重ねる…といった具合です。
それぞれの層で違う素材を使用しますが、それぞれの素材の良さがうまく調和していなければいけません。

宇治抹茶のガナッシュとレミーマルタンのガナッシュの重ねたボンボンショコラ

「コーティング用のチョコレートも含めれば4つの要素が詰まっているので、
互いの美味しさが損なわれないよう細心の注意を払います。
味の強さ、層の厚み、食感、口どけのスピード…などなど、たくさんの『いじり所』を最適なところに調整します。
切ったときの断面が美しいかも評価されるんですよ。」

多くのお店とコンテストで腕を磨いてきた小抜シェフ。
PRESQU’ILE chocolaterie(プレスキルショコラトリー)では、チーフショコラティエとして、ブランディング、経営管理、メニューの考案、チョコレート作り、若手の指導を一手に担います。

「吉祥寺には本格ショコラトリーが他にありませんので、ショコラティエの技術を楽しんでいただけるようなチョコレートを提供しています。
例えば、ボンボンショコラを複数の層で仕立てているのもそのためです。
断面の美しさ、香りの変化が楽しめるのが手作りならでは。
近くのお店では買えないチョコレートばかりなので、お客様に新鮮に思って、喜んでいただけています。」

PRESQU’ILE chocolaterieのチョコレートの特徴

プレスキルショコラトリーでは、『ボンボンショコラ』『Bean to Bar』そして、他店ではなかなか見られない『フォンダンショコラ』をラインナップ。
それぞれにお客様に喜んでもらうための技術が詰められています。

PRESQU’ILE chocolaterieのボンボンショコラ

ボンボンショコラの特徴は、チョコレートが2層になっていて、香りや味の変化を楽しめること。

人気の粒『フルール』。ライチのガナッシュとタイベリーのパートドフリュイを重ねています。

たとえば、プレスキルショコラトリーで人気のひと粒は、バラとライチのガナッシュと、タイベリーのパートドフリュイの2層になっています。

口に含むと、最初にライチとホワイトチョコレートの味わいが、
続いて華やかな香りと優しい酸味、適度な渋みが特徴のタイベリーの味わいが広がり、
最後にバラのリキュールの香りが鼻から抜けていきます。

美しい断面を作ること、それぞれの味わいが調和していることは、ショコラティエの技術の見せ所。
小抜シェフが挑戦してきたチョコレートのコンテストでも特に重要視されるポイントが、しっかりと抑えられています。

筆者が「ボンボンショコラに使われているチョコレートも豆から作ったチョコレートなんですか?」とお尋ねすると、
「ボンボンショコラには、工房で作ったチョコレートと製菓用のチョコレートをブレンドしています。
工房で作ったチョコレートは、カカオの香りを活かすことに注力しているので、他の素材の良さを消してしまいがちです。」とのこと。

素材選びは、「ボンボンショコラを美味しく作れるか」が基準。
「たくさんあるから」や「せっかく作ったから」という理由で工房のチョコレートを使うのではなく、
美味しく作るために最適な素材が選ばれているのです。

PRESQU’ILE chocolaterieのBean to Bar

プレスキルショコラトリーのBean to Barは、『カカオの風味』をしっかりと感じられるのが特徴です。

「一般的に販売されているチョコレートは、バニラ香料が入っているものが多く、味わっていくと最後にバニラの香りがふわっと感じられます。
それが美味しくない、というわけではないのですが、何も入れずともカカオにはカカオの美味しさがあります。
そんなカカオそのままの風味を楽しんでいただきたいです。」

カカオの香りを邪魔しないよう、プレスキルショコラトリーのBean to Barに入っているのはカカオ豆由来の成分とお砂糖だけ。
お砂糖も、カカオの風味が最も引き立つという理由から、グラニュー糖を使っています。

さらに、いい香りを閉じ込め、悪い香りを飛ばすために、これまでに多くの試行錯誤を重ねてきました。
コンチング中にどのタイミングで砂糖を入れるか、装置の蓋を何時間開けておいて、何時間閉めておくか。
そんな「いじり所」を一つ一つ試し、納得の美味しさのチョコレートに仕上げました。

「海外のチョコレートは、作ってから日が経ってしまっていて、香りが飛んでしまいがち。
日本の工房で作ったチョコレートならではの、濃厚でフレッシュな美味しさを楽しんでください。」

PRESQU’ILE chocolaterieのアクセス・営業時間

所在地:〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-15-18
JR中央線、京王井の頭線「吉祥寺」駅から徒歩9分
営業時間:11:00-19:00
定休日:不定休

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