CHOCOLATIER PALET D’OR BLANC

ガラス張りの店内に、立ち並ぶ銀色の装置の数々。
見たこともない装置の中で、アイボリーの液体がたぷたぷと揺れています。

ここ、『CHOCOLATIER PALET D’OR BLANC(ショコラティエ パレ ド オール ブラン)』は、世界初の『自家製ホワイトチョコレート専門店』。
カカオ豆を焙煎し、砕き、ペーストにして、油を搾り取り、砂糖とミルクを混ぜてホワイトチョコレートにする。
その地道な作業が、見通しのよい店内で全て行われる、世界で唯一の専門店です。

このお店を立ち上げたのは、国内に3店舗を展開する、ショコラ専門店「ショコラティエ パレ ド オール」を率いてきた、三枝俊介シェフ。
4店舗目となるこの「ホワイトチョコレート専門店」の立ち上げは、三枝シェフにとって「未来のためにやるべきこと」だと言います。

「これまでのホワイトチョコレートは、『特徴のないカカオバター』から作られてきました。どんな用途にも使いやすくできるように脱臭・脱色処理をされて、大量生産されるカカオバターです。
しかし、本来、カカオバターはカカオ豆の産地や品種、加工方法により、特徴をもっています。その特徴を生かす技術、扱う技術を追求して蓄積する、それが『ホワイトチョコレート専門店』のやるべきことです。」

『ホワイトチョコレート専門店と銘打てば、ホワイトチョコレート好きの人に売れる』

そんな打算は、三枝シェフの中には一切ありません。
大量生産のカカオバターを使わない、唯一無二の美味しさのホワイトチョコレートをつくる。
その技術の礎を作り後世に伝えるのが、三枝シェフのやるべきことだと言います。

シェフの積み上げる技術とはどんなものなのでしょうか?

CHOCOLATIER PALET D’OR BLANCができるまで

1956年生まれの三枝シェフ。
厳しい修行時代をへて、1991年に自身の洋菓子店をオープンし、一時はその規模を11店舗まで伸ばします。

転機が訪れたのは1996年。
フランス・リヨンの名店『ベルナシオン』で出会った『豆から作る、唯一無二の味のチョコレート』をきっかけに、ショコラティエへの思いを強くします。

2004年、関西初の本格ショコラ専門店『ショコラティエ パレ ド オール OSAKA』をオープン。
2007年、東京・丸の内に「ショコラティエ パレ ド オール TOKYO」をオープン
そして2014年、『今後の人生をチョコレートの追求のために使う』という決意のもと、『アルチザン パレ ド オール』を山梨県清里高原にオープンし、チョコレート作りの専用設備を導入。
当時、ほとんどのチョコレート店が未踏だった領域、『豆から作るチョコレート』づくりに挑みます。

CHOCOLATIER PALET D’OR の『豆から作るチョコレート』とは

通常のチョコレート専門店では、製菓用チョコレートを購入してきて、さまざまなフレーバーや素材と組み合わせて作り上げたものを商品として販売しています。
一方で、三枝シェフは市販の製菓用チョコレートを使わずに、カカオ豆を焙煎・ペースト化して作った自家製チョコレートを使うことに着手しました。
これが、業界の常識とは異なる、『豆から作るチョコレート』です。

「極端に言ってしまうと、市販の製菓用チョコレートで作ったショコラは、レシピさえあれば他の人にも作れてしまいます。
しかし、私は一人のショコラティエとして、他の人にも、機械にも作れない、唯一無二の味を作りたい。
日々カカオ豆と向き合って、カカオ豆を扱う技術を身に着けた末にできるチョコレートこそ、
『ショコラティエの作るチョコレート』として、胸を張れるものになると思います。」

チョコレートの原材料、カカオ豆と向き合い始めた三枝シェフ。
海を越えてカカオ豆の産地に足を運び、さまざまな農園のカカオの味を比較し、それぞれの素材としての特徴を学びます。

日本に戻れば、入荷したカカオ豆の加工技術を探索します。
どんな条件でチョコレートにすると、どんなチョコレートになるのか。
どうやったら美味しくなるのか、美味しくないときはどうすればいいのか。
さまざまな試行錯誤を繰り返し、経験を積み上げていきます。
焙煎の時は、1℃単位、秒単位で、設定ができる高性能なオーブンを使いつつも、本当に頼りにしているのは自身の感覚。
「やっているうちに、『そろそろ焼きあがったよー』とカカオ豆の声が聞こえるようになる」と、シェフは言います。

「以前こんなことがありました。ある産地のカカオ豆は、食べてみるととても美味しく、高品質な豆だと思って入荷をしました。
しかし、チョコレートにしてみると、どうしても渋みが残ってしまって、美味しいチョコレートにならなかったんです。
ですが、他の産地のカカオ豆から作ったチョコレートとブレンドすると、とても美味しいチョコレートができました。
他の産地のカカオ豆のチョコレートが持つ突出した個性を、そのカカオ豆の渋みがつなげてくれて、味に奥行きができるイメージです。
こうした経験は、カカオ豆と接しているからこそ得られるものです。
そして、こうした経験の先に作られたチョコレートは、その経験をした人にしか作れない、唯一無二のチョコレートとなっていきます。」

カカオ豆と向き合い、経験を技術として蓄えていく三枝シェフ。
そのシェフの長年の気がかりが、『カカオバター』でした。

CHOCOLATIER PALET D’OR BLANCの『自家製カカオバター』


カカオバターとは、カカオ豆から搾り取った油のこと。
カカオバターに砂糖・ミルクを加えるとホワイトチョコレートができます。
さらに、カカオバターには様々な用途があり、チョコレートを作るときの粘度調整や、焼き菓子に加えてしっとりさせる、化粧品の原料といった目的で幅広く使用されています。
用途が広いため、化粧品原料や製菓材料として、脱臭処理をされた無味無臭のものが一般的に流通しています。

 

「いろいろなカカオバターを取り寄せてみても、これだと思うものに巡り合えない、そんな時期がありました。
カカオバターは買うしかないのが常識だったのですが、あるとき訪れたカカオ豆の産地で、小型の搾油機を目にしました。
『これがあればカカオバターも自家製でできるのでは?』と思い、どうにかその装置を手に入れられないか、詳しい業者さんに探していただきました。」

CHOCOLATIER PALET D’OR BLANCで導入した搾油機(カカオ豆からカカオバターを搾る機械)

こうして、自家製カカオバターづくりにまで着手した三枝シェフ。
カカオバターを自家製にすることで、多くの発見があったと言います。

「カカオバターもカカオ豆と同じように、産地によって特性があります。
風味だけではなく物性的にも違いがあるので、産地によって扱い方を変えなければいけません。
たとえば、ガナッシュ(チョコレートとクリームを混ぜたもの)は、固まったときの舌触りをよくするために減圧して空気を抜くのですが、さらさらだったガナッシュが減圧によって、ボールを逆さにしても落ちてこないほど、固まってしまったこともありました。
そんな、『カカオバターを扱う技術』を一つ一つ積み上げることを、ショコラティエ パレ ド オール ブランでやっていきたいと思います。」

『カカオバターを扱う技術を積み上げること』
それができるのは、現在ではショコラティエ パレ ド オールだけだ、と、三枝シェフは使命感を持って取り組んでいます。
じつは、自家製カカオバターづくりができるのは、ショコラティエ パレ ド オールが4店舗の拠点をもった中規模のショコラティエだから。
小規模なチョコレート店1店舗だけでは、自家製でカカオバターを作っても、消費しきることが難しいのです。
一方、ショコラティエ パレ ド オール ブランで作られたカカオバターやホワイトチョコレートは、ショコラティエ パレ ド オール全店で提供されるチョコレートにも使用されるため、余剰が発生しません。
ホワイトチョコレート専門店という業態を維持し続け、カカオバターを扱う技術を積み上げることは、4つもの店舗をもつ三枝シェフならではの取り組みです。

「ビジネス的な観点から言えば、チョコレートはカカオ分を下げて、砂糖とミルクをたくさん入れた方が、利益率が向上します。
しかし、お金がたくさんあっても、それをもって死ねるわけではないので、自分の役割は、今までみんなが作ってきてない、チョコレートの技術の土台を残すことだと思っています。」

自分が現役でいられるのは、あと5年か、10年か。
その間に、業界のために遺せる技術を作りたい。
そんな思いの中、三枝シェフが人生をかけて培っていく技術が、ショコラティエ パレ ド オール ブランのチョコレートに込められています。

CHOCOLATIER PALET D’OR BLANCのおすすめチョコレート

ショコラティエ パレ ド オール ブランのホワイトチョコレートは、全てカカオ豆から作った自家製です。
このブランドならではの、唯一無二の味を楽しむことができます。

CHOCOLATIER PALET D’OR BLANCのおすすめチョコレート①パレドオール ブラン

看板商品は、こちらの『パレ ド オール ブラン』
自家製ホワイトチョコレートを使用した、シンプルなショコラです。
わずかな歯ごたえを持った円盤状に成形されたチョコレートの中に、滑らかなくちどけのホワイトチョコレートのガナッシュが閉じ込められています。
シンプルなホワイトチョコレートの美味しさを堪能できます。

CHOCOLATIER PALET D’OR BLANCのおすすめチョコレート②シングルディスティラリーショコラ ブラン

自家製ホワイトチョコレートに、5種類のウイスキーを合わせたボンボンショコラ。
ホワイトチョコレートはカカオ豆の産地によって風味が異なるため、5種類のウイスキーそれぞれに対して、最適な相性のホワイトチョコレートをセレクトしています。
ホワイトチョコレートだからこそウイスキーの個性がクリアに引き立ち、今までにない衝撃的な味わいです。

CHOCOLATIER PALET D’OR BLANCのおすすめチョコレート③タブレット テロワール ブラン トリニダード

じつは、ホワイトチョコレートの味は、使われているカカオ豆の産地によって違います。
その違いを楽しめるのが『タブレット テロワール ブラン』のシリーズ。
ガーナ、タンザニア、トリニダードなどの産地の異なるホワイトチョコレートの板チョコレートです。
それぞれを食べ比べると、産地によって変わる風味に驚きと感動を覚えます。

なかでもおすすめは『トリニダード』
さわやかな乳味と甘味に輪郭をもたらす、かすかな燻製香が特徴です。

CHOCOLATIER PALET D’OR BLANCのアクセス・営業時間

所在地:東京都港区南青山1-1-1 ツイン東館B1F
アクセス:東京メトロ銀座線 青山一丁目駅 徒歩3分(駅直結)
営業時間:10:00 – 20:00
定休日:日曜日
URL:http://www.palet-dor.com/info_blanc.html

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