BRAND STORYブランドストーリー

『柑橘の魅力を磨き上げて宝石に仕上げていくのがオランジェットの真髄』

業界でも珍しいオランジェット専門ブランド「oranjewel」代表、オランジェット橋本さんの一言です。
チョコレートのサブ的アイテムという概念を破るために彼が取り組むのは、個性あふれる国産柑橘とそれに合うチョコレートを世界中から選ぶこと。
「オランジェットってこんなに美味しいんだ!」食べた人の言葉の向こうに、柑橘農家の未来を見つめながら。
そんな「oranjewel」のストーリーをご紹介します。



“オランジェット橋本”ができるまで


「1分1秒でも長く眠りたい子どもでした」

小学校時代は毎朝始業3分前に家を出ていたというオランジェット橋本さん。
当然朝ごはんを食べる時間などない息子に、母が用意したのがファミリーパックのチョコレートでした。
ひと包みのチョコをぱくっと口に入れて登校する、そんな毎日。

大学生になってもその習慣は続き、ランチにはカップラーメンに必ずガーナミルクチョコレートを添えて……が定番。
その様子を見た後輩が誕生日にカゴいっぱいのチョコレートをくれたことをきっかけに「自分はチョコレートが好きなんだ」と自覚します。

本格的に目覚めたのは社会人になってから。
週末ごとにチョコレート屋さんを巡ったり、バレンタイン時期に百貨店の催事に通うことで、段々とパティシエの方が作るチョコに惹かれはじめます。




そんな中でオランジェットへ導いてくれたのが京都伊勢丹で開催されていた「サロン・デュ・ショコラ」でのセミナー。
フランスMOF(フランス国家最優秀職人章)ショコラティエのフィリップ・ベル氏のオランジェットの講座を受講された時のこと。

「初めてオランジェットってこんなに手間暇がかかるんだと知り、正直に凄いと思ったんです。
 もちろんセミナー後にフィリップ・ベルさんのオランジェットを買って食べたんですが、衝撃の美味しさで。
 意識もしていなかったオランジェットというアイテムに惹かれはじめたんです」

もともと理系人間。追求したい性格というオランジェット橋本さん。
早速オランジェットを自分で作ってみようと、スーパーで買ってきたのは和歌山県産の柑橘「八朔」と明治製菓のミルクチョコレートとブラックチョコレート。

「じっくりと1日かけてオランジェットを作りました。
 いま思えば見た目はまだまだだったけど、思いのほか美味しかったんですよね」

ただオランジェットを作る工程はなかなか大変で続くことはなく、食べ比べて研究したり、イベントを通じて広くオランジェットの良さを広める活動を進める毎日が続きます。
また、仕事や家庭を持つ中で、なかなか大きな一歩が踏み出せない時期が続いたオランジェット橋本さんでしたが……
お子さんが生まれ、食生活を見直すために始めた家庭菜園をきっかけに、大きく未来が動きました。




「家庭菜園を運営する会社が社会人向けの農業学校も運営していて。
 自分も働きながら通学して農業の勉強をはじめたんです。
 校内には農業で起業を目指す人が集まるゼミもあって、そこで本格的にオランジェット事業を練りましたね。
 先生方からの後押しもあって、とうとう起業のために転職することになりました」


独立起業前に選んだ転職先は全国の柑橘農家さんと繋がっている会社。
全国の農園へ出向いて離農者と新規就農者の事業継承を手伝いながら、農業ならではの収益性の課題を感じたそう。
新規就農者が安定した収益を得られるように、また、魅力的な加工品が農業従事への魅力になるようにと、社内にオランジェットを製造する加工部門を立ち上げます。
自社農園と全国の農家さんの柑橘を使って仕上げたオランジェットは、百貨店で販売するまでに至りました。

オランジェットが「マイノリティ」から「マジョリティ」になる日




大阪で1日1億円を超えるチョコレートが売れると言われる阪急うめだ本店のバレンタイン催事「チョコレート博覧会」。
2023年に初めてオランジェットを特集する「かんきつジェット」企画が登場しました。
『オランジェットに熱い人』として企画の監修を担当したオランジェット橋本さんですが、当初はウケない企画だと思っていたと、かつての本音を語ってくれました。


「オランジェットってチョコレートの中ではサブ的な立ち位置なんですよね。
 だから阪急の催事で取り上げると聞いた時は『尖ってるな』と思いました。
 他にはないイベント感を毎年作っていた阪急ですから納得でしたが、たぶんウケないだろうなって思ってたんです。
 そしたら自分が担当したトークショーに来てくれたみなさんの熱量が凄くて!
 企画された百貨店の方もこんなにもりあがると思ってなかったし、オランジェットも一瞬で売り切れてしまって。
 オランジェットにすごく手ごたえを感じて、はりきって独立しよう!と思いました」

宝石のように国産柑橘を磨き上げていく「oranjewel」の魅力


自分の作りたいもの、魅せたいものを作りたい。
心機一転、立ち上げた自身のブランド「oranjewel」
「orange」+「jewel」を組み合わせたブランド名には、オランジェットが宝石のように手間暇かけて作られることと、見た目の美しさを表現。
また、柑橘の魅力を磨きあげて原石から宝石に仕上げていくオランジェットの真髄が詰まっています。




きらきらと果肉の粒が輝くよう、3mmにスライスされた柑橘のコンフィ。
その美しさを損なわないよう、また、素材の調和を意識した量のチョコレートコーティング。
食べる前からその美しさに見惚れてしまうほどです。
これらの宝石を作り上げるために譲れないこだわりは2つ。

まず1つめは『国産柑橘を使うこと』
毎年柑橘の収穫シーズンである初春と秋の2度、全国の農園をめぐるオランジェット橋本さん。
そのエリアは九州、中国、四国、近畿、中部、関東と広範囲で、その場で実際に食べて美味しいと思ったものをセレクトしています。
中には使い方に困っていると言われた品種をあえて使用してみるというパターンもあるのだとか。

「農家さんに訪問して気づくこともたくさんあります。
 柑橘は収穫する時期で変化するし、出したい個性が違ってきます。
 販売していない試作も含めると40品種くらいの国産柑橘に出会っていて、今年は20前後の品種使う予定にしています」



オランジェットの作り方は十人十色ですが、「oranjewel」の場合はあえて茹でこぼしを行わず、果肉の粒立ちやうまみ香りを残すように工夫。
また、糖分を落とし込む際には余分な水を使わず、果実から出た果汁で炊き上げます。
浸透圧で毎日徐々に糖度を上げて…美しいコンフィやピールに仕上がるのは約30日後ほど。
出来上がった味わいから、どんなチョコレートを合わせるのか考えるのだそう。


「oranjewel」もうひとつのこだわりは『柑橘に合うチョコレートを選ぶ』
そのため厨房には常に20種ほど、個性が強めなクーベルチュールチョコレートをストックしています。
なぜ個性が強いものを合わせるのか?
そのヒントをくれたのはオランジェット橋本さんの奥さんの一言でした。

「ワークショップで浜松の柑橘農家さんとコラボして温州みかんのオランジェットを作ったんです。
 その時に妻が『カカオハンターズのチョコと合わせたらいいんじゃない』と。
 実際に作ってみたらすごく合って!
 同じ柑橘でも合わせるチョコが違うとこんなに変わるんだと気づいたんです。
 柑橘の個性を消すのも生かすのもチョコレート。
 そこからチョコを選ぶようになりました」

ほとばしるような酸味。
華やかでフレッシュな果皮の香り。
ともに昇華できるチョコレートを選ぶことで、唯一無二のオランジェットを作り上げています。


柑橘農家さんの未来をオランジェットで変える!



柑橘にもいろんな個性があるこということ。
また、日本にはまだまだ知らない柑橘があること。
そう気づいてもらうこともオランジェット橋本さんが「oranjewel」を立ち上げた目的のひとつです。

「単純にオランジェットの認知度を上げたいと思っています。
 サブじゃなくメインにもなる商品だと思うし、それをもっと知ってもらいたいです。
 その結果として国内の柑橘農家さんの力になれたらいいなと思っています。
 生産現場はとても大事で、素材があって初めてオランジェットが作れる。
 だからこそ大事にしていきたいと思っています。
 最終的には農家さんの収益が上がったり、一般の方が新しい柑橘を買ってみたという出会いが生まれるといいなと思います。
 そう、一言で言うなら『オランジェットで農家さんの未来を変えたい』!」

あなたと日本の柑橘農家さんを繋ぐ「oranjewel」のオランジェット。
ひと齧りすれば、オランジェット橋本さんが見てきた農園の景色が脳内に広がるかも?
まずはおひとつ、味わってみてはいかがでしょうか?

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