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チョコレートの作り方!どうやってできてる?徹底解説


世界中で最も有名で、愛され続けるお菓子の一つ「チョコレート」。しかし、その作り方は意外と知らない人も多いかもしれません。

今回はそのチョコレートの作り方について解説していこうと思います。

チョコレートの原料「カカオ豆」

まずチョコレートの大部分を占める原料がカカオの木から採れる「カカオ豆」です。このカカオはアオギリ科テオブロマ属の植物で、1年を通して緑の葉をつける常緑樹の1種です。平均気温が27度以上で最低気温が15度以上、かつ年間を通して気温が安定し、湿度の高い熱帯地域で栽培されており、赤道を中心とした南北緯度20度のエリアを「カカオベルト」と呼び、カカオの生育に適した環境と言われております。

このカカオの木になる果実「カカオポッド」の中の種子こそが、チョコレートの原料のカカオ豆になるのです。取り出されたカカオ豆は果肉と共に発酵と乾燥が施され、一般的に発芽能力を失った安定状態で世界中に流通し、チョコレートメーカーの下に届きます。カカオ豆はハスク(外殻)に覆われており、その中にある栄養を蓄えている胚乳が可食部であり、チョコレートに加工される部分になります。

チョコレート作りの最初の工程「選別」

カカオ豆が生産者から届いたら、まず品質をチェックし、不良豆や小さなゴミ、石等を取り除く「選別」を行います。
不良豆とは、十分に乾燥し切れず輸送中にカビが生えてしまったものや、豆が潰れてしまったもの、豆同士がくっついてしまったもの、発芽してしまったもの等があります。また、カカオ農家が発酵や乾燥させる段階で混入した小さなゴミや石等も、選別することで丁寧に取り除いていきます。
この工程を疎かにすると、チョコレートが出来上がった際にカビ臭くなったり、味わいに雑味が出てしまったりする原因となります。また、この後の「ロースト」の工程でカカオ豆の大きさ別に温度や時間を変えて火入れするため、この工程でカカオ豆の大きさを選別するメーカーもあります。

チョコレートの味わいを左右する工程「ロースト」

カカオ豆の選別が終わったら、今度はチョコレートの味わいを大きく決定付ける工程、「ロースト」に入ります。
元々カカオ豆にはチョコレートたる香りがあるわけではなく、ローストによりカカオ豆に含まれる香気成分の前駆体が熱反応を起こして、チョコレートらしい香りを生み出します。また温度の加減により様々な香りを引き出すことができ、ローストはチョコレート作りにおいてとても重要な役割を担っています。
ローストには様々な方法がありますが、大まかに以下の3つに分けることができます。

・ホールビーンズロースト
カカオ豆を直接過熱してローストする方法。コンベクションオーブンや改良したコーヒーロースター等を使って熱を加えます。一番シンプルでスタンダードなロースト方法です。ハスク(外殻)が付いた生豆のままローストするため、揮発性の高い香りを逃さずローストできるメリットがありますが、カカオ豆の表面と中心で加熱温度に差が生じたり、カカオ豆の大きさの不均一性によって加熱ムラが発生しやすいデメリットがあります。

・ニブロースト
カカオ豆を一度砕き、ハスクを取り除いて、カカオニブ(胚乳)のみをローストする方法。この方法はホールビーンズローストに比べて加熱する対象の粒が小さくなり、加熱ムラを抑え、均一にローストすることができるメリットがありますが、カカオニブを直接加熱することで揮発性の高い香りが飛びやすいデメリットがあります。

・リカーロースト
カカオ豆を一度砕き、ハスクを取り除いて、カカオニブのみに別けた後、さらに摩砕してペースト状になったカカオリカーをローストする方法。この方法は液体状にすることで対流させながら効率的に熱を伝え、加熱ムラを抑えることができるメリットがありますが、コントロールが難しく、工程が複雑化してしまうため、比較的規模の大きい機材に限定されるデメリットがあります。

ハスク(外殻)を取り除く「ウィノウィング」

※ロースト方法により各工程が前後するため、ここでは一番スタンダードな「ホールビーンズロースト」を行った場合の工程を記す。
ローストを終えたカカオ豆は粗めに砕き、不可食部のハスク(外殻)と胚芽を取り除く「ウィノウィング」を行います。

砕かれたカカオ豆はウィノワーと呼ばれる機械で、微風を当てて比重の軽いハスクや胚芽を飛ばして、カカオニブ(胚乳)と分離させます。ハスクや胚芽はチョコレートの味わいに雑味を生むだけでなく、繊維質で舌触りにも悪影響を及ぼすため、この工程で取り除きます。ウィノワーで取り切れなかったハスクや胚芽は、人の目により手作業で取り除く場合もあります。

チョコレートらしい滑らかな口溶けを生み出す「コンチング」

ウィノウィングを終えたカカオニブは、次にチョコレートらしい滑らかな口溶けを生む「コンチング」と呼ばれる工程に移ります。
カカオニブを長時間練り上げ、カカオニブの中にあるカカオバター(油脂分)を引き出し、また人間の舌で感知できる限界の粒度である20ミクロン以下まで細かくすることで、滑らかな口溶けを実現します。代表的なコンチングは、メランジャーと呼ばれる石製のローラーが回るドラムの中でチョコレートを練り上げる方法ですが、製菓会社等の大きいメーカーでは、ブレードが取り付けられたドラムの中でチョコレートを練り上げる、大型のコンチングマシーンを使っている場合もあります。
またこの段階で砂糖や、ミルクチョコレートの場合は粉乳も加えて、最終的な味わいを整えていきます。
コンチングは摩擦により熱が発生するため、この工程でも揮発性の香りや酸が蒸散します。適度にコンチングを行えば、フレッシュな風味を残しつつ、洗練された味わいのチョコレートに仕上げることができるものの、長い場合はメランジャーで1週間ほどコンチングするため、その間、常に熱を与え続けることになり、滑らかなチョコレートになる代わりに、カカオ豆本来のフレッシュな風味まで損なわれる可能性もあります。
その為、場合によってはコンチングの前に、リファイナリーと呼ばれる二つのローラーが回転して挟み込む機械で、カカオニブをある程度の細かさまで粉砕し、コンチングにかける時間を短縮し、カカオ豆本来の風味を残す対策をとっているメーカーもあります。

艶やかで保存性の高いチョコレートに仕上げる「テンパリング」

コンチングが終わって滑らかになったチョコレートは、保存性の高い状態を維持するために「テンパリング」を行います。
カカオ豆に含まれる油脂のカカオバターは6パターン(I、II、III、IV、V、VI)の結晶構造があり、パターンにより融点が変わる性質を持っています。その中でも個体として安定し、かつ口溶けの良いV型の結晶構造を作ることにより、チョコレートの融点が33℃程度になり、常温下では溶けず、口に入れたときに人の体温で溶けるチョコレートに仕上がります。
逆にテンパリングを失敗すると融点が下がり、常温下でも溶けやすくなったり、油脂がチョコレート表面に浮いて出てくる「ブルーム」と呼ばれる状態になり、口溶けが悪くなる原因となります。
テンパリングには様々な方法がありますが、まず「恒温型テンパリング」と「昇温型テンパリング」に分けられます。
恒温型テンパリングは、チョコレートを一定の温度を保って長時間撹拌することにより、カカオバター内にゆっくりとV型の結晶を作らせる方法で、長時間一定の温度を保って撹拌させるため、手作業に向いておらず、基本的には大規模な製菓会社が扱う大型の機械や、業務用のテンパリングマシーンに取り入れられています。
次に昇温型テンパリングはチョコレートの温度を上下させ、カカオバター内にV型の結晶核を作り、更に連鎖反応によって周りにも同じ結晶を作らせる方法で、短時間かつ少量のチョコレートでもテンパリングできるため、小規模のパティスリーやショコラトリー、又は家庭向けの方法です。ここでは代表的な昇温型テンパリングの方法をご紹介します。

水冷法
チョコレートの入ったボールを湯銭して45~50℃の温度まで温めてチョコレートを完全に溶かし、今度は冷水でチョコレートの入ったボールを冷やしながらかき混ぜ、27~28℃まで温度が下がったところで、再度湯銭して31~33℃まで温度を上げる方法。一番スタンダードな方法で、正確に行えば失敗が少ないものの、チョコレートの量が多い場合は、全体の温度を均一にしながら上げ下げすることが難しいため、少量向けの方法です。

タブリール法
チョコレートを45~50℃まで温めて完全に溶かし、全体量の1/2~2/3程度の量のチョコレートを大理石台(マーブル台)の上で、パレットナイフ等を使いながら薄くのばしたり、まとめたりを繰り返しながら均一に冷やし、27~28℃になったところで、残りのチョコレートの中に戻し、かき混ぜながら31~33℃に調整する方法。比較的短時間でテンパリングができますが、大理石台で冷やす工程には熟練した技術が必要となるため、プロ向けの方法です。

フレーク法
チョコレートを45~50℃まで温めて完全に溶かし、その中にテンパリング済みのチョコレートを細かく砕いて少しずつ加え、31~33℃に調整する方法。比較的簡単かつ短時間でテンパリングできますが、気温やチョコレートの分量等により加えるチョコレートの量も変化するため、事前の準備とコツが必要な方法です。

チョコレートの見た目を決める「モールディング」

テンパリングを終えたチョコレートは、最後にモールドと呼ばれる型に流して成型し、固める「モールディング」を行います。
テンパリング後のチョコレートは粘度のある液体で、そのままだと気泡が残りやすいため、モールドにチョコレートを流したら、まずモールドから溢れた余分なチョコレートを落とし、その後振動を与えて気泡を抜く作業を行います。これによりチョコレート内の空気が抜け、より密度が高く丈夫で表面の綺麗なチョコレートに仕上がります。モールドに流し終えたら、ゆっくりと冷却し、チョコレートが固まったら型から外して完成になります。

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