チョコレート(カカオ)は発酵食品!その目的と進化に迫る!

こんにちは。ショコラナビライターの みな です。 今回はチョコレート製造工程において、その香りに大きな影響を与える「発酵」についてお話します。 「発酵食品」というと、味噌・チーズ・漬物・納豆・お酒などが浮かぶのでは……と思いますが、実はチョコレートの原料であるカカオ豆も、ある目的のもと人為的に発酵が行われています。 そこで「なぜそうするのか?」「具体的に何をしているのか?」「どのような変化が起こるか?」を順を追って解説していきます。

発酵の目的

「発酵」とは微生物を利用して食品を作ることです。 カカオにおける発酵は、その種の中に含まれる酵素の活性を誘導し、化学反応を引き起こすことで、チョコレートの香りのもとになる物質を生成し、苦味・渋みを和らげる効果があります。「発酵」は、カカオの持つ香りのポテンシャルを最大限に引き出すための、重要な工程なのです。

発酵の方法

発酵は大きく分けて2種類の方法があります。 ・ヒープ法 果肉ごと山積みにしたカカオ豆をバナナの葉で覆う手法。 主にアフリカの国々で採用されています。 農園内で作業できるので、道具の準備や運搬の手間がなく、農家の負担も少ない方法です。 ・ボックス法 果肉ごと木箱に入れ、その木箱を階段式に積み上げて管理する手法。 主に中南米、アジアで採用されています。 攪拌などの作業を、一度に大量に効率的に行うことができます。 下記はボックス法による発酵作業の様子です。

ポッドから果肉を取り出す作業

木箱に詰めた豆をバナナの葉で覆う作業

発酵の進度を温度で確認

発酵に使用される階段式の木箱

写真提供:フーズカカオ様 このほか、籠にカカオ豆を入れバナナなどの葉で覆う「バスケット法」や、カカオ豆を低い棚に入れ数段に重ねる「棚式発酵法」などもあり、生産国や地域によって多様な手法がとられていますが『果肉ごと』『直射日光が当たらない場所に集め』『時折かき混ぜて空気に触れされる』という部分は共通しています。発酵自体は自然に起こる現象ですが、その環境を整え、品質を均一化するために人の手が加えられています。 現地での作業の様子は、明治のyoutube公式チャンネル「ハローチョコレートホームツアー」でも見ることができます。 2:48から発酵の解説です。

発酵によって起こる豆の変化

発酵は、大きく下記の3段階に分けられます。 ・発酵初期 酵母(植物の表面や空気中に生息している微生物)が、カカオパルプ(果肉)の糖分を分解し、アルコールを生成します。 この過程は「嫌気性発酵」と呼ばれ、酸素がない状態で活動する菌が働きます。 発酵のはじめに、果肉ごと詰んで密着させるのは、酸素のない状態を作り出すためです。 ・発酵中期 前期の工程で生成されたアルコールを栄養源として「酢酸菌」が働き、酢酸が生成されます。 この過程は「好気性発酵」と呼ばれ、酸素を必要とする菌が働き、多くのエネルギーが生成されるため熱が発生します。 発酵の途中で、詰まれたカカオ豆を攪拌するのは、酸素を取り入れるためです。 ・発酵後期 前期・中期で発生したアルコールや酢酸などの酸と、発生した熱により、カカオ豆に多く含まれるタンパク質や多糖類が分解され、ペプチド・アミノ酸・単糖類へと変化します。この化学反応により香りのもとになる成分が生成され、のちの焙煎の工程によって香り物質になります。同時に渋みのもとになるポリフェノールも酸化し、マイルドな風味に変化します。 この過程を経ることで果肉の大半は溶け、残った部分は茶褐色になります。 こうして発酵を終えた豆は、乾燥させた後、袋詰めされ各国へと出荷されていきます。

進化していくカカオの発酵技術

近年Bean to bar(カカオ豆からチョコを作るムーブメント)やクラフトチョコレート文化の広まりで「発酵過程」が大きく注目されるようになってきました。その流れの中で、老舗クーベルチューラーから新進気鋭のBean to bar ブランドまで、各社さまざまな取り組みが行われています。 この項では私が今まで食してきた「発酵」に着眼されたチョコレートを紹介して参ります。

VALRHONA(ヴァローナ) 『イタクジャ』

ドゥーブル・フェルマンタシオン(二重発酵)を採用したチョコレート(カカオ分55%) 自然発酵後、パッションフルーツの果肉を加えて、二度目の発酵が行われています。 フレッシュな黄色い果実がふわっと上品に広がり、長い余韻が続きます。後味は軽やかですが、香りがギッシリと凝縮されています。 詳しくは公式サイトより (現在も取り扱いあり。同技術によるキタヴォアという商品も存在しますがこちらは2022年10月以降より販売再開予定)

Dari-K(ダリケー) 『トロピカルカカオ チョコレート』『シトラスカカオ チョコレート』

トロピカルカカオには発酵途中でパッションフルーツの果汁が加えられています。 ココアのような香ばしさや旨味に、南国フルーツの香り。穏やかさと華やかさのある一品。 シトラスカカオには発酵途中でオレンジとライムの果肉が加えられています。 八朔の果肉を思わせる爽やかでフレッシュな香り、ラムネのような可愛い酸味。マイルドで心地よい味わい。 詳しくは公式サイトより (期間限定販売につき現在は取り扱いなし)

Pump Street Bakery CHOCOLATE(パンプストリートベーカリーチョコレート) 『フェルメンテーションプロジェクト ジャマイカ76%』

自家製酵母サワードウ(パン種)をカカオ豆発酵のプロセスに活かした一品。 柔らかい苦味と香ばしさ、角のない淡白でまろやかな旨味があり、豆乳麦芽飲料やブリオッシュの皮が浮かぶような味わいです。 詳しくは公式サイトより (取り扱いあり*2022年3月時点)

明治『明治 ザ・チョコレート発酵アソート』

発酵日数違いのカカオ豆を使ったチョコレートのセット。 ・ロング(濃緑) ツンとくるパッション系の酸味、黒胡椒のようなスパイス感、どっしりした旨味。 ・ショート(薄緑) レアチーズケーキのようなまろやかな旨味。黄色い柑橘のわたを思わせる、さっぱりとした酸味と渋味。 詳しくは公式サイトより (期間限定販売につき現在は取り扱いなし)

ARA CHOCOLAT (アラショコラ『チュンチョ70% 3days』『チュンチョ70% 4days』

同地域・同カカオ分で、発酵日数の異なるカカオ豆でそれぞれ作られたチョコレート。 3日発酵は、鮮やかな赤色が浮かぶ、フルーティ&ジューシーな味わい。濃厚なトマトジャムのイメージ。 4日発酵は、黄金色に炊かれたアップルコンポート(シナモン入り)のよう。爽やかな香り、こっくりとした甘味、ほんのりスパイシー! 詳しくは公式サイトより (期間限定販売につき現在は取り扱いなし)

FRIISHOLM(フリスホルム)『チュノダブルターン70%』『チュノトリプルターン70%』

同地域・同カカオ分で、発酵時の撹拌回数を変えたカカオ豆でそれぞれ作られたチョコレート。 ダブルターンは、ブラックベリーやチェリーが浮かぶようなシャープな香りと酸味と渋味。 トリプルターンは、シナモンスティックが浸されたホットミルクを飲んでいる感じ、ハチミツをかけたパンのような穀物っぽさも。 詳しくは公式サイトより (期間限定販売につき現在は取り扱いなし) 当サイトショコラナビでも、PRESQU’ILE chocolaterieさんのライム発酵のチョコレートを扱っています。 青々しい柑橘が豊かに香る逸品です。気になる方は是非お試し下さい。 ◆ファーメンテーション ライム 70% ↓ 詳細&ご購入はこちらから ↓ 作り手の住む土地や得意分野によって、今後もこうした試みも多彩になっていくと予想されます。 発酵の要となる菌は農園や土地によってさまざま、研究も進化し続けています。チョコレートの味わいは無限大、これからもますます目が離せなくなるでしょう。 普段何気なく食べているチョコレート。実は綿密な工程を経て作り出されています。その奥深さに、是非想いを馳せてみて下さい。 カカオについてもっと知りたい方はこちらもどうぞ

カカオ農園ってどんなところ?

2019.06.14
参考文献 『プロのための洋菓子材料図鑑vol.4』 柴田書店,2016 『チョコレートの手引き』蕪木祐介 雷鳥社,2016
この記事のライター:
ライター:みな
Bean to bar をひたすら食べ続ける深堀系のチョコレートオタク。 食べ比べが趣味。未知の技術やフレーバーが大好き。 みなのツイッターはこちら
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