世界では様々なチョコレートのコンテストが行われていますが、国や地域も違えば評価基準も様々です。
消費者として数多あるチョコレートの中から商品を選ぶとき、コンテストでの受賞歴を参考にされる方も少なくないはず。
今回はそんなチョコレートのコンテストの中でも、世界的に権威のある『International Chocolate Awards(インターナショナルチョコレートアワード)』について、その創設理由や審査方法、日本メーカーの受賞歴等ご紹介したいと思います。
また、ICAはイギリス、イタリア、アメリカに拠点を置く国際的なパートナーによって運営されており、ペルーやコロンビア、中米の成長国支援コンテストを含む13の地区大会を通して、毎年延べ3000以上の作品がエントリーされる世界最大級のチョコレートのコンテストとなっています。
英語のサイトですが、理念や創設の経緯等はICAホームページに詳しく記載されおります。
表で比較してみると、CCCはフランス国内を中心としたショコラティエ自身にフォーカスを当てたコンテストになっていますが、ICAとAoCはファインチョコレートやビーントゥバーチョコレートの製品に特化したコンテストになっています。そして、ICAとAoCを比較してみると、目的や理念は近いですが、審査員の選定や主としている地域に若干の違いが見られます。また、ICAは前述の通り、地区大会と世界大会に分けられており、世界大会で受賞するには2回の審査を受ける必要があります。それぞれ特性を理解した上で受賞作品の購入の参考にした方が良いでしょう。
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目次
International Chocolate Awardsとは?
International Chocolate Awardsは2012年にチョコレートレビュワーやフードアナリストらにより設立された全世界の優れたチョコレートを審査・表彰する団体です。 このInternational Chocolate Awardsの頭文字を取って、『ICA』と表記された名前が一般的に認知されています。 ICAのホームページには以下の様な目的が記されています。 『上質なチョコレートの製造と、上質なチョコレートで作られた製品の卓越性を表彰する独立したコンテストです。 世界で唯一、完全に独立した国際的なファインチョコレートのコンペティションとして、ファインチョコレートを製造する企業やショコラティエを育成する企業、ファインチョコレートを扱う企業、職人をサポートすることを目指しています。 これらの市場の成長と発展を支援することで、私たちは上質なカカオを栽培する農家を支援することを目指しています。』この目的・理念に則り、関連企業から独立することで公平性を保ち、ブランドイメージや広告に惑わされることなく、本当に優れたチョコレートを選考し世に広める活動をしています。
ICAのルール概要と選考システム
エントリー基準
エントリーする作品はすべてチョコレートが使用されていることが大前提であり、そのチョコレートもICAが定める『ファインチョコレート』であることが求められます。 ICAが定めるファインチョコレートの定義とは・・・1.香料としてバニラを使用する場合は、天然由来で無ければならない。 2.レシチン(乳化剤)はヒマワリ由来や大豆由来等、様々な原料由来でも使用可とする。 3.チョコレートには、精製または未精製のキビ砂糖や甜菜糖などの天然糖、またはココナッツシュガー、メープルシュガー、ステビア、ルクマ、その他天然資源由来の代替天然糖のみ使用可とする。 4.ダークチョコレートは、タブレットやコーティングで使用する場合、最低60%のカカオ固形分を含んでいなければならない。また、他の成分と混合してフィリングで使用する場合は最低55%のカカオ固形分まで許容する。 5.ミルクチョコレートは、最低30%のカカオ固形分を含んでいなければならない。 6.ホワイトチョコレートは、最低25%のカカオ固形分を含んでいなければならない。 7.シングルオリジンまたはブレンドのプレーンチョコレートのタブレットは、ビーントゥバーメーカー、カカオマスやカカオリカーから製造する部分的加工メーカー、または自社でカカオ豆を調達し他メーカーに委託・製造してもらったブランドに限りエントリーを受け付ける。
上記の条件を満たしたチョコレートのみが使用を許可されています。また、2021-22のICAの審査から新しいルールが追加となり、プレーンチョコレートのタブレット以外のカテゴリーについても、作品に使用するダークチョコレートやミルクチョコレートの原料となるカカオ生産者の情報を開示し、生産地と生産者名、或いは農業団体名が分かるものでなければならなくなりました。 これにより大規模で製造される一部市販のクーベルチュール等、生産者が特定できないチョコレートの使用に制限がかかり、エントリーのハードルが高くなってしまいましたが、その反面他のコンテストと差別化を図り、トレーサビリティを確保し、よりカカオ生産者にフォーカスを当てることのできるコンテストに舵を切った形になっています。(主として使用するダークチョコレートやミルクチョコレートのカカオ生産者の情報の開示は必要ですが、これまで通りのルールに則れば、市販のクーベルチュールとのブレンドは許容されています。また、この新ルールはホワイトチョコレートについては適用外となっています。)カテゴリー
ICAが定めるカテゴリーごとにコンテストにエントリーすることができますが、全てのカテゴリーを通じて一つのメーカーから20作品までのエントリーが上限となっています。 現在ICAの大まかなカテゴリーは以下の通りです。 タブレット部門 ・シングルオリジンまたはブレンド(プレーンなチョコレート) ダーク/ミルク/ホワイト ※一回の製造量が80kg以下の場合は「マイクロバッチ」として別カテゴリーで審査される。 ・フレーバー(チョコレート以外に副素材を使用したチョコレート) ダーク/ミルク/ホワイト/コンビネーション スプレッド部門 ダーク/ミルク/ホワイト ボンボンショコラ・プラリネ部門 ・ガナッシュ/トリュフ(プレーン又はフレーバー) ダーク/ミルク/ホワイト/コンビネーション ・ナッツベース(プラリネやマジパン、ドラジェ等) ダーク/ミルク/ホワイト/コンビネーション ・キャラメル ダーク/ミルク/ホワイト/コンビネーション ・フルーツ(コンフィチュールやゼリー、ドライフルーツ等) ・砂糖/バター/クリーム(ヌガーや焼き菓子等) ドリンキングチョコレート部門(一部大会のみ実施) ・ダークチョコレートまたはココアパウダー 水ベース/ミルクベース ・ミルクチョコレート 水ベース/インフュージョンまたはカカオティー ・アルコール飲料(チョコレート又はカカオが原料)地区大会と世界大会
ICAには大きく分けてふたつのラウンドがあります。 まずひとつめのラウンドは、各エリアごとに開催される地区大会です。 各国のエントリー数に応じてエリア分けされ、「ヨーロッパ大会」や「アメリカ大会」などの地域に分かれて開催されています。 現在日本は「アジア太平洋大会」に属しています。 ふたつめのラウンドは、世界大会です。 ひとつめの地区大会の審査の中で、ICAの基準を満たした作品だけがエントリーされる最終審査です。選考方法
まず審査はICAの創設メンバーを含む「主任審査員」と、特別なテストを受けて合格した「審査員」が行います。 沢山のエントリー作品を正確かつ公平に審査するには審査員の肉体的、精神的負担を軽減させる必要があるため、まず事前審査として小さなサンプルを複数の審査員がテストし、その作品が賞を通過する可能性があるかどうかを二択で選択し、肯定が過半数を超えた場合、メインの審査に進むことができます。 この事前審査により、エントリー総数の約3分の2まで作品数を削減する狙いがあります。 そして、メインの審査では味覚の正確性を保つため、一回のセッションを1.5時間で区切り、15~20作品の審査に制限しています。 複数のセッションで審査を行う審査員は間に1時間の休憩をとることになっており、またタンニンや砂糖の蓄積による悪影響を防ぎ口内のクレンジングやリフレッシュを行うため、ポレンタスープ(トウモロコシのピュレ)や水、パン、リンゴ、クラッカーなどが採用されています。 メインの審査では審査員がブラインドテイスティングを行い、ICAがカテゴリーごとに評価項目を作成し、独自開発したスコアシステムにより20項目を5段階で評価し、その合計となる100点の中からスコアを付けていきます。 またスコアとは別に各審査員には、その作品が賞にふさわしいかどうかを5段階で評価しています。 この評価は最終的にスコアが拮抗した場合に、主任審査員が賞を決めるうえで参考にするポイントとなっています。 最後に賞の獲得に近い作品を主任審査員が審査し、賞を与えるか否か、またエントリーされたときに提供された情報に間違いがないかなど最終チェックが行われます。
受賞
審査の結果、ICAが定める品質基準を満たし、かつカテゴリー内で最高得点だった作品にのみ金賞が与えられます。 しかし仮にカテゴリー内で最高得点であっても、その作品がICAが定める品質基準を満たしていないと判断された場合は、そのカテゴリーの中での金賞の決定を見送る場合もあります。 また、金賞以外にもICAが定めた品質基準をクリアした作品には銀賞、銅賞が与えられ、さらに原料のダイレクトトレードや革新的なレシピの作品等、スコアシステム以外の項目で評価される場合や、ICAの定めるカテゴリーに大別されない作品で基準を満たす最高得点のものには特別賞も与えています。 ただし、一度賞を受賞した作品であっても、市販されている同作品が審査時と比較して著しく品質を下回っている場合は、受賞を取り下げる可能性があるほど厳しいものになっています。ICAと他のコンテストの比較
表で比較してみると、CCCはフランス国内を中心としたショコラティエ自身にフォーカスを当てたコンテストになっていますが、ICAとAoCはファインチョコレートやビーントゥバーチョコレートの製品に特化したコンテストになっています。そして、ICAとAoCを比較してみると、目的や理念は近いですが、審査員の選定や主としている地域に若干の違いが見られます。また、ICAは前述の通り、地区大会と世界大会に分けられており、世界大会で受賞するには2回の審査を受ける必要があります。それぞれ特性を理解した上で受賞作品の購入の参考にした方が良いでしょう。



























