チョココラム

解決!『チョコレート食べすぎると鼻血がでる』嘘?ほんと?どうしてそうなった?

こんにちは!毎日1チョコしないと手が震えるフクナガです。

「チョコレートを食べすぎると、鼻血がでる

昔から言われ続けているこの噂、本当なのかどうか気になりませんか?

鼻血がでるなんて言われてしまうと、チョコレートを食べるときにいちいち気になってしまいますよね。

「このくらいなら大丈夫・・・かな・・・?」と心配しながら食べるのでは、せっかくのチョコレートが台無し。

この噂、本当なのでしょうか?

本当なら、どのくらいなら食べて大丈夫なのでしょうか?

実はリケジョのフクナガが、海外の論文も含めて徹底検証!

気になるところをはっきりさせます!

はじめに:あなたは過敏な人なのかも?

まず、頭に入れておくべきこと。

それは、『他の人が大丈夫でもその人だけ症状が現れる、過敏な人がいる』ということ。

アレルギーを思い浮かべていただくとわかりやすいと思います。

卵、小麦粉、乳製品など、一般的には食べても大丈夫なものでも、人によっては食べられない、ということはありますよね?

同じように、鼻血もニキビも、たまたま食べた人が過敏な人なため、症状がでているということはありえます。

一方で、チョコレートを食べると必ず鼻血が出る。そんな人は過敏な体質と考えられ、アレルギーの一種という可能性もあります。一度お医者さんに相談してみましょう!

それではいよいよ『一般的な人』にとってチョコレートはどんな悪さをするのか?をご説明します。

『チョコレートの食べすぎで鼻血が出る』という説。

この説はチョコレートに含まれる『チラミン』『カフェイン』『テオブロミン』という3つの成分のせいだといわれています。(参考    )

本当なのでしょうか、よく調べてみましょう!

チョコレートの中の鼻血原因成分①『チラミン』

チラミンとは?なぜ鼻血が出る?

まずはチラミン。あまり聞きなれない名前ですね。

チラミンは動物、植物、微生物などの体内で生成される物質です。

脳内で信号をやりとりする「神経伝達物質」によく似た構造を持っており、高血圧発作の誘引物質といわれています。参考:Wikipedia『チラミン』

こちらの論文によると、人体に対する影響として、0.5g以上のを食べると血圧上昇の影響が認められています。

チョコレートに多く含まれるチラミンによって、血圧の上昇が引き起こされ、鼻血が出てしまうと考えられています。

実はチラミンはチョコレートにほとんど入っていないようです

では、チョコレートにはどのくらいのチラミンが含まれているのでしょうか?

Wikipediaによると、チラミンはチーズや赤ワイン、チョコレート、発酵食品などに多く含まれている、と書かれています。

一方で、こちらの書籍によると、チョコレート中のチラミンの量は『存在しないか気にしなくていい』量であると記載されています。

あれ、どちらが本当なのでしょうか?

どうもこれはWikipediaが誤りのようです。

先ほどご紹介した『チラミンが入っていない』と書かれている書籍は、抗うつ剤である『MAOI』というタイプの薬を服用している方のための栄養ガイドラインです。

実はチラミンは『MAOI』という薬を服用していると、その血圧上昇作用が非常に激しくなります。

一般の人ならチラミン量0.5g以上で血圧があがるのですが、『MAOI』を服用している人は100倍も影響が出やすくなってしまいます。参考:論文『発酵食品に含まれるアミン類

そんな『MAOI』を服用している人にとってもチョコレートは『大丈夫』とされていることを考えると、チョコレートにはチラミンが含まれていなさそうです。

さらにこちらの論文では、10種類のチョコレートについてチラミンの量を調べていますが、チラミンは検出されませんでした

さらにこちらの論文では、4種類のミルクチョコレートについてチラミンの含有量を調べています。

その量はチョコレートを1キロあたりチラミン摂取量は1.2ミリグラムでした。

血圧が上がるといわれる0.5グラムと比べるとたった200分の1と、ごくごく少ない量だということがわかりました。

どうやら『チラミン』はチョコレートで鼻血が出る原因ではないようです。

なぜチョコレート=チラミン説ができてしまったのか

以上、3件の研究結果を見ると、『チョコレートにチラミンは入っていない』と考えた方がよいように思えますね。

では、Wikipediaにあった『チラミンはチーズや赤ワイン、チョコレート、発酵食品などに多く含まれている』というのはなんだったのでしょうか?

実は、Wikipediaの出典元の情報をみてみると、「片頭痛の引き金になる」と書かれているだけで、「チョコレートにチラミンが多く含まれる」とは書いていません・・・・

さらにこちらの医療関係者用のページではチョコレートにチラミンが含まれる、という文章が出典元つきで書かれていますが、出典元の論文はチューインガムと頭痛に関する記事で、チオミンとチョコレートには全く触れられていませんでした・・・・

おそらく『チョコレートが片頭痛を引き起こす』という研究結果と『チラミンが片頭痛を引き起こす』という研究結果がどこかでつながってしまい、『チョコレートにチラミンが含まれる』という話になってしまったと思われます。

ちなみにチョコレートの頭痛については最後の方に出てきます。

以上のことから、チョコレートにはチラミンは入っておらず、『チョコレートにチラミンが多く含まれているから鼻血が出る』というのは間違いと考えてよさそうです。

チョコレートの中の鼻血原因成分② 『カフェイン』

カフェインとは?なぜ鼻血がでる?

つづいてカフェイン。コーヒーやチョコレート、栄養ドリンクに多く含まれる一般的な物質ですね。

カフェインには中枢神経の興奮による強心作用、覚醒作用があります。眠気覚ましにコーヒーを飲む、というのはこの効果ですね。参考:Wikipedia『カフェイン』

カフェインの鼻血に対する影響は、カフェインの興奮作用が血圧の上昇をもたらし、鼻血を出させるという考え方によるもののようです。参考;Wikipedia『鼻血』

国立循環器病研究センターHPより

上のグラフはコーヒー1杯(カフェイン量約80ミリg)を飲んだ時の血圧上昇です。

カフェインを含んでいないものを飲んだ「プラセボ」に比べて5mmHgほど血圧が上昇しているのがわかります。

チョコレート中のカフェインの含有量

では、気になるのはチョコレートに含まれるカフェインの量です。

こちらの調査結果によると、ミルク、ブラック、ハイカカオチョコレートなどの種類によりその量は相当幅があり、調査の中で最も多いものではチョコレート100g当たり120mgが含まれているそうです。

つまり、『板チョコレート1枚(約60g)食べると、コーヒー1杯分と同じくらい血圧が上がる』ということになります。

今度は鼻血が出そうな話になってきましたね!(笑)

カフェインで鼻血がでるのか?

・・・と、ここで皆さんにお尋ねしたいのが、

『コーヒーの飲みすぎで鼻血が出る』ということ、聞いたことあるでしょうか?

確かにここまでの情報ではいかにもチョコレートのカフェインで鼻血が出そうなのですが、それが本当ならコーヒーの飲みすぎでも鼻血が出るはず

コーヒーのみならず、栄養ドリンクやコーラなど、カフェインが含まれる食品は多くありますが、摂取しすぎて鼻血がでるという話はほとんど聞きません。なぜでしょうか?

先ほどの血圧上昇値、『5mmHg』というのがくせものです。

先ほどのグラフでは差があるように思えます、これが鼻血がでるほどの差なのでしょうか?

そもそも血圧は一日の活動の中でも激しく上下しています。

一般的に起床時、入浴、食事で変動するといわれているのですが、食後のコーヒーを飲んだら食事分とコーヒー分、ダブルで血圧が上がることになりますが、鼻血が出るという話はあまり聞きません。

そう考えると、この「血圧5mmHgアップ」という変化が鼻血の直接な原因とは考えにくいことがわかります。

チョコレートの中の鼻血原因成分③『テオブロミン』

テオブロミンとは?なぜ鼻血が出る?

続いて『テオブロミン』。こちらはカカオに多く含まれている成分で、名前もカカオの学名テオブロマに由来しているそう。(参考:Wikipedia)

テオブロミンは前述したカフェインに類似する物質で、こちらの論文にもあるようにカフェインと同様に中枢興奮作用、心筋興奮作用などがあり、強心剤としての利用もされていたようです。

テオブロミンの強心効果が鼻血をもたらすというのが、鼻血がでる根拠とされています。

カフェインとは違い、血圧は上がらない

「カフェインと似ていて強心効果がある」といわれると、カフェイン同様に血圧を増加させるて鼻血がでるのでは?と思われがちですが、

こちらの論文によるとテオブロミンの摂取によって、血圧は下がります

「強心効果」といわれる効果の中には、「拍出量の増加」のように血圧を上げる効果と、「血管の拡張」のように血圧を下げる効果の両方があります。

テオブロミンの場合はカフェインと違い「血管の拡張」の効果が強いため、カフェインのように血圧が上がることがないと考えられます。

テオブロミンで鼻血はでるのか?

では、本当にテオブロミンで鼻血はでるのでしょうか?

ここは様々な化学物質の活性をまとめたデータベース、TOXNETを見てみましょう。

こちらのデータベースでは様々な文献を横断した、化学物質の毒性に関する情報が記載されています。

テオブロミンのページを見てみると、

It has been stated that “in large doses” theobromine may cause nausea and anorexia and that daily intake of 50-100 g cocoa (0.8-1.5 g theobromine) by humans has been associated with sweating, trembling and severe headache. TOXNET

とあります。

『大量に摂取すると吐き気、食欲不振を引き起こし、毎日50~100gのココア(テオブロミン量で0.8g~1.5g)を摂取すると発汗、震えおよび重度の頭痛が引き起こされる』と書かれており、鼻血(nosebleed)については特に触れられていませんね。

同じページでは様々な試験結果が紹介されており、血管の拡張作用は確かにあるようなのですが、鼻血に関して触れられている文献はありませんでした

他にも調査してみても、「テオブロミンによって鼻血が引き起こされた」という研究結果はありませんでしたので、『強心作用があるからもしかしたらあるかも?』くらいの感覚と思われます。

結論:鼻血とチョコレートは関係ない!

以上のことから、チョコレートが鼻血の原因とされる理由について、

①チョコレートに多く含まれるチラミンが血圧上昇を招いて鼻血が出る

→チョコレートにチラミンは含まれていない

②チョコレートに多く含まれるカフェインが血圧上昇を招いて鼻血がでる

→同じくらいのカフェインを含むコーヒーでは問題がないため、血圧が上昇しても鼻血が出るほどではない

③チョコレートに多く含まれるテオブロミンの強心作用で鼻血が出る

→さまざまな実験が行われている中でも報告がなく、あくまで想像の範囲内

と考えられ、鼻血はチョコレートとは関係ないと考えられます。

食べすぎの悪影響は?

さて、ここまでの調査で「テオブロミン」は食べすぎると頭痛などの症状が現れることがわかりました。

ではどの程度なら食べて大丈夫なのでしょうか?

計算してみると、カカオ80%のチョコレートだと、1日100グラムを毎日食べていると、頭痛が発生するようです。

こちらのページによると、テオブロミンは88%のチョコレートに100g当たり0.8gのテオブロミンが含まれています。

先ほどのデータによると『テオブロミン量で0.8g~1.5gを摂取すると発汗、震えおよび重度の頭痛』と記載されていましたね。

つまり、カカオ88%を100g、毎日食べ続けていると頭痛などの症状が発生するということになります。

ふつうの板チョコは1枚50グラムくらいですので、板チョコ2枚分ということです。

私をはじめ、チョコ好きなら軽く食べてしまう量ですね。

頭痛を起こしたくなければ板チョコは1枚半くらいにしておきましょう

私は頭痛くてもいいので食べますが。

終わりに

以上、気になるチョコレートと鼻血の関係について調べてみました。

今回調べて驚いたのは、Wikipediaでも間違えていることがある・・・ということです。

チョコレート中のチオミン量について、日本語で調べると「たくさん入っている」という情報がけっこう出てくるのですが、いずれも信頼できる出典元がありませんでした。

おそらく皆さんWikipedia を見てしまったのでしょう。

一方英語で調べると「入っていない」という実験結果が出てきましたので、こちらが正しいと思われます。

ネットは便利ですが、出典元はちゃんと確認しないといけませんね。

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