
カカオ農園ってどんなところ?
「チョコレートはどうして美味しいの?」
その秘密は、チョコレートの原材料、カカオ豆の農園にあります。

フーズカカオ株式会社 福村様
今回は、インドネシアとタイでカカオ農園の品質改善を手掛ける『フーズカカオ株式会社』の福村様にインタビュー!
美味しいチョコレートに欠かせない、『美味しいカカオ豆づくりの秘訣』を教えてもらいます。
ご挨拶


はじめまして。フーズカカオの福村です。
どうぞよろしくお願いします。

美味しいチョコレートが生み出される『カカオ農園』
チョコレート好きとしては、一度は行ってみたい夢の国ですね!


カカオ農園ってどんなところ?

理由は、カカオの栽培にある程度の広い土地が必要だからです。
ひとつの農園でカカオをたくさんつくる場合は、低地でひらけた土地が必要になります。
ちなみに、山間地でも斜面の土地を有効に使えばカカオの栽培が可能なので、こういった土地でもたくさんのカカオ農園が運営されています。
とはいえ、どちらにしろ都市の近くでは栽培されていることは少ないですね。
僕がはじめていった農園は、東京から飛行機で15時間、都市部から車で8時間ほどかかりました。

そんな秘境の農園どうやって見つけたんですか?

カカオ農園は Google で検索しても出てきません笑
僕が初めてカカオ農園に行った時はAirbnbで探しました。
Airbnbとは、バックパッカーがよく利用する、小さな宿泊施設がたくさん掲載されている予約サイトです。
宿泊施設の写真にカカオの木が写り込んでいる施設を見つけて、そこを訪ねて行きました。


都市部ではカカオ農園がどこにあるかなんて誰も知らないですからね。自分で地道に探すしかありませんでした。


山地のカカオの農園って、ぱっと見はただの森みたいな感じです。
カカオの木が、暖かくて、ほどよくじめじめした日陰を好むので、
パパイヤやココナッツ、バナナ、マンゴーなどの木が生えている中に、カカオがたくさん生えている感じです。

やはり感動しましたか?

それが僕がフーズカカオを作ったきっかけでもあります。

どうしてカカオ農園の管理が必要なの?

カカオ豆の乾燥を地面で行っている様子

カカオ豆を地面に広げて乾燥していたり、カビの生えた豆をほったらかしにしたり…
現地の人はゴミを平気でその辺に捨てるので、たばこの吸い殻などのゴミがたくさんカカオ豆に混ざったり、
鶏や犬がカカオ豆の上を平気で歩いていますし…
正直、「今まで僕達、こんなものを食べていたの?」って思いましたね。

それはちょっと嫌ですね。
日本人と現地の人では、カカオに対する感覚が違うんですね。

カカオを食べるものとしてではなく、『換金作物』としてしか見ていないからでしょうね。
でも同時に僕はこう考えました。
「これをもっと良くすれば、もっと美味しいチョコレートを作れるんじゃないかな」
その思いを持って、フーズカカオ株式会社を立ち上げたんです。
フーズカカオ株式会社では、農園の管理運営を行っています。
具体的にはカカオ豆の取り扱い方法や発酵方法の指導をしています。

美味しくなるのでしょうか?

自分たちが指導して作られたカカオ豆は、最初の数カ月は美味しいものがつくれなくて苦労しました。
理想と現実の差ですね。(苦笑)
何十回も試行錯誤して、どんどん改良を重ねて、いまでは安定して美味しいカカオ豆をつくれるようになりました。
当初のものと比べると、格段に変わりましたよ!


発酵がうまくいっていないカカオ豆は、舌に残る嫌な渋みがあります。
しかし、僕たちが作ったカカオ豆では、それが改善されました。
さらに渋みがなくなると、カカオ豆の本来のおいしさが際立ちます。
カカオの持つ、フルーツやナッツのような繊細なアロマが楽しめるカカオ豆ができました。

カカオ豆の管理って大切なんですね!
カカオ農園の管理って何をするの?


とても色々なことをやっているので…
発酵の時間をちゃんと守ってもらったり
カカオ豆を乾かす時に地面に広げないで下さいって言ったり
倉庫ではタバコを吸ったり、匂いの強いものを一緒に保管しないで下さいと言ったり
虫の害を防ぐために農薬が使われているのですが、それを生物農薬にして下さいとお願いしたり
カカオ豆を入れる袋を通気性のものにして、カビが生えないようにしてもらったり
雨対策にビニールハウスを建てたり
本当に色々なことをやってきました

カカオ豆乾燥用の台を新たに作る様子


ものすごく細かいところまでやっているので、協力してくれる農家さんを見つけるのも大変でした。

カカオ農家さんって、思ったより消極的なんですね。

質の良いカカオ豆を作ったとしても農家の人にはあまりメリットがないんですよね
その辺りは僕のブログでも詳しく解説をしています。
とはいえ 皆さん美味しいチョコレートが食べたいですよね。
僕もそうです。
自分の口に入れるものは、大切に作られたものであってほしい。
そんな思いでカカオ農家さんにお願いをしています。
カカオ農園運営の大変さ

これまでに導入した害虫対策のひとつ


元々IT業界で働いていたので情報関連は強いのですが、農業や食べ物の扱いについてはまだまだ勉強が必要です。
カカオ豆からチョコレートに加工することは日本のダンデライオンチョコレートで修行して学べましたが、カカオ農園のことは現地でしか学べないですし、土地ごとに違う課題があります。
日本酒やワイン、コーヒーなどで使われている技術や資材を勉強して、カカオに応用しています。


日本酒やワインは農作物を発酵して作られる点が、
コーヒーは生育している環境と、豆として流通する点や焙煎過程がカカオと似ています。

どんな技術が応用できるんですか?

生物農薬はコーヒーで使われていたので、それがカカオに使えるんじゃないか?と思って提案したんです。


農薬といっても化学薬品ではなく、生き物…カビなんです。
カビと言うと、パンやチーズなど食べ物に生えるイメージがあると思いますが、虫に生えるカビというものが存在します。
この虫に生えるカビを散布すると、害虫にカビが生えて害虫を駆除することができます。
農薬をまくのと同様の効果が得られるので、「生物農薬」と呼ばれています。
カビなので、使って量が減ってしまっても、農家さん自身で増やせるので低コストです。
さらに、土壌や人体への悪影響が少なくて済みます。
もちろん、使用しすぎると生態系への心配があるので、今は収穫期にだけ使っています。


農薬を使わないカカオのカカオポットを割ってみると、中身が虫に食われていることが多々ありました。
半分近く虫にやられているときは、農家さんの収入も半分になるので、大きな被害です。
虫に食われているかどうかは、カカオポットの外見からはわかりません。
カカオポットって割るのがなかなか大変なので、割って中身が虫に食われているとかなりガッカリします笑

分厚いカカオポッドを割って、中身を取り出す作業中


今までは農薬を使っていましたが、農薬は体にもカカオにも土地にもあまり良くないものです。
なるべく負担の少ない生物農薬を使うことで、人や環境により良いカカオ作りをして行こうとしています。


そんな消費者の気持ちを農家さんに伝えてあげるのも、僕たちの役割です。
農家さんも、自分たちが食べるものはオーガニックにこだわっていたりします…笑
彼らも本当は農薬を使いたくないんですが、カカオが換金作物である限りは、量を作ることだけが目的になるので、使わざるをえなかったという背景があります。
あと苦労していることと言えば、費用面ですね。
僕たちは運営しているカカオ農家からカカオ豆を買いあげるんですが、10トンぐらいは買ってあげないと、カカオ農家の収入になりません。
カカオ豆10トンはチョコレートで行ったら20万枚分ぐらいです。
その分のカカオ豆の売り先を考えておかないと、今度は僕たちがやっていけなくなります。

そんなにたくさんのチョコレート、作っても売れるか心配ですね…

「カカオ豆が美味しいとチョコレートも美味しくなる」ということは、まだ多くの人が知らずにいます。
そのため、僕たちカカオ豆の卸も、チョコレートのメーカーさん達も、気の抜けない経営状況が続いています。


たくさんの人が美味しいカカオ豆があることを知ってくれれば、
そして、たくさんの美味しいチョコレートのメーカーができれば、
僕たちの活動が続いて、美味しいカカオ豆をたくさんの人に届けられます。
チョコレートを食べるときには、
「このカカオ豆はどこでどんな風に作られているのかな?」ということをぜひ気にしてみてほしいですね
カカオのことを知れば知るほど、もっとチョコレートが美味しくなりますし、本当に美味しいチョコレートに出会えるようになります。
いつかカカオ農園にも遊びに来てほしいです。

農家さんたちとチョコレート作り(皮むきをしているところ)


僕たちがナビゲートしますので、安心してついてきてください!
僕たちがアジアのカカオ農園を開発しているのも、日本との距離が近いからです。
多くの人が農園に遊びに来てくれれば、チョコレートをもっと楽しめますし、
農家さんも「日本の知り合いのためにこのカカオを作っているんだ」という意識がどんどん生まれるはず。いいこと尽くしなんです。
いずれツアーを組もうと思っていますが、個別に訪問したい方はフーズカカオのwebサイトからでもいいですし、ぼくのFBに直接連絡をいただいても構いません。一緒に農園づくりやっていきましょう!

初めましてショコラナビの福永です。
今日はどうぞよろしくお願いします。